第6回公害資料館連携フォーラムin東京 報告

2018年12月14-16日、第6回公害資料館連携フォーラムin東京が開催されました。14日は都内の大気汚染公害現場のフィールドワーク、15-16日は法政大学多摩キャンパスで「市民の力でSDGsを活用する」と題した基調講演、そして資料、地域づくり、展示、教育、企業、公害入門の分科会、全大会が行われました。

基調報告は、SDGs市民社会ネットワーク業務執行理事の今田克司氏が登壇されました。2015年国連で採択された持続戒能な開発目標策定過程にかかわった市民団体の代表として、SDGsの問題点の指摘と活用法の提案がなされました。SDGsとは、2015年に国連が採択した持続可能な開発目標のことで、飢餓や貧困、平和など17のゴールを定めており、それに向かって社会を変革するための指針です。今田さんは、SDGsはツールであり、それぞれの立場で使える部分を使ってみてくださいと語られました。

その後、テーマごとに分科会が開催されました。「展示キャプションの作成を通じて資料整理の方法を学ぶ」と題した資料分科会では、環境アーカイブズ所蔵「0002スモンの会全国連絡協議会・薬害スモン関係資料」を使ったワークショップを行いました。実際の資料を手に取りながら、ペアになってキャプションを考えてみるという形式です。

立教大学共生社会研究センターの平野泉氏の司会で、「だれが?いつ?なぜ、この資料を書いたのか?だれに読んでほしかったのか?」など、さまざまな疑問を読み解きながら、キャプションを作成しました。

資料から「なぜ?」を読みとり、その回答を書いていくことで、資料を利用する人が検索しやすい目録づくりのヒントになるのではないかというコンセプトでした。ペアごとに視点が異なり、できあがったキャプションを発表されるときには、みなさんの熱が伝わってきました。作成した成果は、環境アーカイブズ内に展示しています。

15日は、そのほかに東京と川崎の公害患者と家族の会が取り組んだ公害を起こさない地域づくりについての報告「公害地域再生のまちづくり戦略」(地域づくり分科会)、全国で25回開催された水俣展の意義を考える水俣フォーラムからの報告「巡回20年の水俣展に学ぶ」(展示分科会)、変化する社会に対応する公害資料館の意義とは何かを問う「公害資料館の教育力を考える」(教育分科会1)が行われました。

16日は、アジアに広がる公害に活動を広げた研究者の取り組みを報告する「公害と環境、アジアへの広がり」(公害入門分科会)、イタイイタイ病の原因企業神岡鉱業の当事者が被害者との信頼関係構築にどう向き合ったのかを報告する「SDGsの視点で、イタイイタイ病の経験から学ぶ」(企業分科会)、これからの公害教育を考える「私たちはなぜ公害に抗する教育に取り組んだか?」(教育分科会2)の3つの分科会が行われました。いずれも白熱した議論が交わされた意義深い会となりました。

その後、全体を通してそれぞれの学びを共有する全体会が行われました。最後に環境アーカイブズと大原社会問題研究所内で開催されている薬害スモン資料の展示、大原社会問題研究所100周年記念展示環境アーカイブズ特別展の見学会を実施。23人の見学者が訪れました。見学会の終了をもって、第6回公害資料館連携フォーラムin東京のすべてのプログラムが終了しました。参加人数は約150人。高校生から80代まで幅広い年代の方が参加しています。3日間を通じ、公害を学ぶことの意味を改めて考える場となりました。

※公害資料館連携フォーラム開催は、朝日新聞で報道されています。

朝日新聞 天声人語 「青空を求めた50年」 2018年12月13日(木)掲載

https://www.asahi.com/news/tenseijingo.html

 

 環境アーカイブズ アーキビスト 川田恭子