【イベント案内】たばこ王 村井吉兵衛展 紹介
村井吉兵衛という人物を残された資料や物品から紹介する展示会が押上のたばこと塩の博物館で開催されています。(2020年10月31日~21年1月23日)
村井吉兵衛は、明治期に「たばこ王」と呼ばれた実業家です。白をイメージカラーに外国産のハイカラで工業化された両切りたばこ「サンライズ」「ヒーロー」を売り出したことで躍進しました。村井吉兵衛は京都出身で、ルーツをたどると石川県・鶴来のたばこ商です。一介の商人だった人物が、近代資本主義の黎明期に時流に乗って家業だったたばこ産業で「王」と呼ばれるほどの成功を収めたのです。
1904(明治37)年にたばこが国営化されたのち、吉兵衛は国からの賠償金をもとに村井銀行を設立、その本店として日本橋室町に鉄筋コンクリートの村井ビルディングを建設します。さらに韓国での農場経営、台湾での造林所経営、北海道での石油事業や九州での炭鉱経営など事業をひろげ財閥となっていきます。たばこのイメージの強い吉兵衛ですが、彼の業績はそれだけではありませんでした。
多角経営をおこなう実業家・村井吉兵衛は、京都、熱海、千葉などに別荘を建て、とくに京都の洋館・長楽館は、海外からの来賓たちをもてなす外交の場としても機能しました。家族を巻き込みながら人脈を広げ、事業を大きくしていった姿が浮かんできます。
展示会では、吉兵衛のルーツであり、刻み煙草の伝統をもつ石川県の鶴来のたばこの紹介からたばこ業に従事した村井兄弟商会時代を中心に、彼のライバル、もう一人のたばこ王・岩谷松平との宣伝合戦、そして専売以降の彼の事業と家族や社会とのかかわりについて、さまざまな資料を見ることができます。宣伝合戦ではピエロを模した看板、当時の印刷技術の粋を凝らしたポスターなどが展示され、さらに永田町にあった吉兵衛の邸宅で撮影された映像も流れています。
吉兵衛が活躍した時代は、日本の近代産業の黎明期です。環境アーカイブズがテーマとしている公害、薬害、環境問題は、人間の経済活動を発展させたいという強い欲望が健康被害や環境被害をうみ、社会的な問題となったものです。所蔵資料の作成年代は現代のものが多いですが、その淵源となる明治、大正期の経済活動を資料から見てみませんか? たばこ産業に興味がなくても、当時の事業がどんな展開をしていたのか、どんな記録をつくっていたのか、ぜひ注目してみてください。
環境アーカイブズのアーキビスト・川田恭子が資料のつなぎ役として協力しています。100年前に活きた人間の息吹をぜひ資料から感じてみていただきたいと思います。
会期:2020年10月31日~21年1月23日
会場:たばこと塩の博物館(入場料:大人100円、小中高校生50円)
くわしくはこちら https://www.tabashio.jp/