ごあいさつ
Greetings
忘れないでいるために―担当教員からのごあいさつ
環境アーカイブズには、環境問題をはじめ、薬害、原発、多摩地域の市民活動など、多岐にわたる資料が所蔵されています。
その多くは、これらの問題や活動に関わった個人の研究者や市民活動団体などから寄贈されたものです。すでに公開された資料の作成年を見ると、その年代は1950年代から2010年代までに及びます。
1950年代以降と言えば、戦後日本が、経済発展の道を歩み始めて以降の時期と重なります。あなたは、戦後日本の、経済発展の歩みをどのように記憶していますか?
環境アーカイブズの資料は、戦後日本の「成長」が、環境問題をはじめとする多くの社会問題をともなっていたこと、さまざまな個人や市民の取り組みによって、そうした問題が改善されてきたことを示す、歴史の証人でもあります。
こうした過去の経験を知り、受け継いでいくことは、いまの多様性を見つめ、持続可能な社会を創造する大切な手がかりとなるでしょう。
新型コロナウイルスの流行は、現代社会のもろさと同時に、資料の公開や利用のあり方にも課題を投げかけました。
この流行を受けて、環境アーカイブズでは、新たに郵送複写サービスを始めました。対応可能な資料に限定はありますが、必要とされる方はぜひご活用ください。
ウエブサイトの「所蔵資料一覧」のページを、ご覧ください。
これらの資料には、その時代を生きたひとびとの「声」が刻まれています。
「声」と出会いに来てください。
スタッフ一同、みなさまの利用を、お待ちしています。
2020年 10月15日
担当教員 山本唯人
アメリカ国立公文書記録管理局(国立公文書館)本館の玄関彫像には、次のような言葉が刻まれています。
The heritage of the past is the seed that brings forth the harvest of the future.
(過去の遺産は将来の収穫をもたらす種子である)
公文書や歴史資料等、アーカイブズとして保存されている「過去の遺産」には、人々の営みや組織の活動にかかわる多様な歴史が書き残されています。したがって、現代を生きるわたしたちがそれを読むことによって、過去から多くのことを知り、学び、活かすことができる ― だから、「将来の収穫をもたらす種子」なのです。
アーカイブズとは、将来にわたって保存すべき記録のことを指し、そうした記録を適切に管理・公開する公文書館等の施設、さらにその機能やシステム自体を意味します。日本では少しずつ認知されてきましたが、いまだに人口に膾炙(かいしゃ)している言葉とは言えません。それでも行政機関や企業、大学等がアーカイブズの重要性を認め、近年その取り組みは拡がりをみせています。
わたしたち環境アーカイブズも、その一つです。
環境アーカイブズは、国内外の環境問題、環境政策、環境運動の資料を整理・公開し、研究・教育に広く資することを目的としています。環境分野の多くの資料は、個人の研究者や住民運動団体等で保存されてきましたが、研究者の引退や団体の解散にともない、そうした貴重な資料が処分あるいは散逸する恐れがあります。そこでわたしたち環境アーカイブズは、そうした資料を収集・整理し、広く一般に公開することで、環境にかかわる貴重な資料を活用してもらうとともに、それらを将来世代に継承する役割を果たします。
環境アーカイブズという「過去の遺産」には、「将来の収穫をもたらす種子」がたくさん詰まっています。
わたしたちも日々の資料整理や展示企画、あるいはホームページやツイッター等を通して、環境アーカイブズの資料や活動をご紹介していきますので、ぜひ多くの方にご利用いただきたいと思います。
スタッフ紹介
Staff
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■ リサーチ・アシスタント(RA)
玉土 大悟(たまど だいご)
●研究テーマ:歴史学、日本中世史(中世後期における擬制的親子関係)
●環境アーカイブズでの担当:文書資料の整理
●中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程に在学中 -
■ リサーチ・アシスタント(RA)
濵島 実樹(はましま みき)
●研究テーマ:歴史学、日本近世史(鹿児島藩島津家/藩政/藩法/一向宗・キリシタン禁制)
●環境アーカイブズでの担当:文書資料の整理
●早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程に在学中 -
■ リサーチ・アシスタント(RA)
樋浦 豪彦(ひうら たけひこ)
●研究テーマ:歴史学、日本近現代史(農村問題と「農村青年」論に関する歴史的研究)
●環境アーカイブズでの担当:視聴覚資料の整理
●早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程に在学中
環境アーカイブズの沿革
History
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法政大学サステイナビリティ研究教育機構のプロジェクトとして「環境アーカイブズ・プロジェクト」が発足
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法政大学多摩キャンパスにて環境アーカイブズ作業室を設置
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サステイナビリティ研究教育機構の「震災・原発問題タスクフォース」の一環として、原発および震災に関する文書・映像資料の収集を開始
※なお、本タスクフォースでは、別プロジェクトととして岩手県陸前高田市議会公文書のレスキュー活動を実施
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サステイナビリティ研究教育機構の閉鎖にともない大原社会問題研究所に統合、「大原社会問題研究所 環境アーカイブズ」となる
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大原社会問題研究所・環境アーカイブズ統合記念シンポジウム
「市民活動記録管理の現状と歴史的課題―日本と韓国の事例を中心に―」開催
「東京都立多摩社会教育会館旧市民活動サービス・コーナー資料の移管経緯と「市民活動資料・情報センターをつくる会」の活動」杉山 弘(市民活動資料・情報センターをつくる会 運営委員)
「水俣学関連資料管理・活用の現状と課題」花田 昌宣(熊本学園大学・水俣学研究センター・センター長)
「韓国の民主化運動資料の収集・管理体制構築の歩み―聖公会大学の民主資料館を中心に―」チョ・ヒヨン(聖公会大学民主資料館館長、同大学社会学部 教授)
コメント:高橋 実(国文学研究資料館 名誉教授、日本アーカイブズ学会会長)、金 慶南(大原社会問題研究所 准教授) -
映像展示「アーカイブズと震災―25年前のフクシマの姿―」(4/8-27)
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「法政大学 大原社会問題研究所 環境アーカイブズニューズレター」創刊
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公害資料館連携フォーラム in 東京(12/15-16)、法政大学で開催
環境アーカイブズ見学会実施 -
大原社会問題研究所100周年記念展示 環境アーカイブズ特別展
「ノーモア・スモン 和解調印から40年 資料でたどる薬害の原点」(18/12/3-19/1/25)
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大原社会問題研究所100周年記念展示 環境アーカイブズ特別展
「消えたふるさと、使われない水―岐阜県・徳山ダム建設反対運動裁判資料を読む」(19/12/9-20/1/31)