Web展示 薬害スモン ビラが伝える患者たちのメッセージ
はじめに
薬害スモンは、キノホルム剤を接種したことにより身体マヒや末端神経障害、視神経障害などの症状をもたらした薬品公害の一つです。
日本では、1955年頃から1970年に発生しました。
1974年、患者たちの全国組織「スモンの会全国連絡協議会(ス全協)」が結成され、1979年から1980年にかけては、地裁の判決や薬事二法(薬事法改正・医薬品副作用被害救済基金法)の成立、和解確認書調印など、全国で運動を繰り広げました。
運動が最も盛り上がった1979年ごろの「運動ビラ」から、患者たちのメッセージを伝えます。
1 記録映画ノーモアスモン―人間として生きるために
資料ID 0002-B39-258-56
作成 スモン東京原告団
時期 不明
スモン東京原告団と福岡スモンの会が企画した28分の記録映画の紹介。患者の実態を知ってもらうため、上映会の開催を呼びかけている。裏面には9人の映画を見た感想が書かれており、患者の苦しみへの共感と、国と製薬会社への怒りが示されている。労働組合で上映会が開かれていたことがわかる。
2 薬事二法廃案、国と製薬会社はスモン全面解決へ向けて、いまこそ誠意を示せ!
資料ID 0002-B39-258-13
作成 スモンの会全国連絡協議会 スモン弁護団・スモンの斗いを支援する会・千代田春闘共闘 千代田区労組
時期 1979年6月15日
スモンの会とその他支援者の団体による国と製薬会社へ被害者との直接交渉を要求し、問題解決に向けた姿勢を示し、支援を呼びかけるビラ。
スモン被害者の掲げている要求は切実で緊急なものであり、国・製薬会社はすみやかに直接交渉を開き、誠意をもって答えるべきであると主張し、支援を呼びかけている。
スモン被害者、家族、弁護団、多くの支援者たちが国会、厚生省へつめかけ、国会内に「スモンは人道問題」という声があふれた。時間切れで廃案となったが、スモンの国民的重要性を示すこととなり、次期国会での成立の足場は築かれた。
3 みなさん御支援ありがとう ついに歴史的「確認書」をかちとる
資料ID 0002-B39-258-12
作成 スモンの会全国連絡協議会
時期 1979年9月18日
1979年9月15日に、スモンの因果関係、加害者の責任と謝罪について明らかにし、国と製薬三社が薬害根絶に最善の努力をすることを約束させた「確認書」が調印された。
「確認書」の調印までの過程では、政府や製薬三社からの反発があったものの、国民の理解と支援の広がりによって、見事にかちとることができたという。
この「確認書」の調印を皮切りに、薬害根絶を推進していくという意志が示されていた。
4 生きる力いまここに(歌の楽譜)
資料ID 0002-B39-258-5
作成 不明
時期 不明
薬害根絶を願うスモンのたたかいのために、作成された歌の楽譜。思いを込めて力強く歌われるようにとの期待を込めて、今村肇により作詞・作曲された。
歌詞の1番では、薬害を被ったいばらの道のような人生をたたかいぬいた喜びが、2番では、「うごかぬあしとしびれるからだ」など、被害の具体的な状況と薬事二法という法律の大切さ、3番では、つらく苦しい時にささえ合う仲間の大切さがうたわれている。
5 スモン投薬証明書のない被害者を即時に救済せよ!
資料ID 0002-B39-258-49
作成 スモンの会全国連絡協議会・スモン東京原告団
時期 不明(1979年ごろ)
スモン被害を訴えていながら、意思のキノホルム剤投薬証明書がないと、救済を受けられないことに反対するビラ。
証明書がないことを口実に、救済を行わないのは、製薬会社や国ができるだけ被害者の救済を引き延ばそうとしているのだと批判。
また、他人の介護なしには生活が営めない重傷者への介護手当を、来年度の予算に計上することを国へ求めた。
このように、スモン被害の救済、薬害根絶について、国や製薬会社が果たすべき重要な課題は残っており、今後の活動に向け国民からの一層の支援に訴えた。
下部の宣伝欄では、今後上映する記録映画「人間の権利―スモンの場合」の上映案内がなされていた。
[作成者情報]
展示作成 前田貴哉 牧野純 中村脩人
資料所蔵 法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズ
資料 「0002スモンの会全国連絡協議会・薬害スモン関係資料」
https://k-archives.ws.hosei.ac.jp/public_document/0002/
本展示は、2022年1月14日に開催された「鈴木宗徳ゼミ×環境アーカイブズ 特別連携セミナー 環境アーカイブズに貴重な環境資料を見に行こう!」の成果として作成された。
指導教員 鈴木宗徳
セミナースタッフ
講師 山本唯人
教育補佐 宇野淳子 長谷川達朗
資料選定 川田恭子
特別連携セミナー ワークショップ風景 2022.01.14 於環境アーカイブス資料公開室